建国大学という夢の果てに

久々に感情が大きく揺さぶられた本だった。切なく泣きたくなるような気持ちが一番残ったが、同時に人と人との本当の絆をも感じ、胸が熱くなることも多々あった。絆を感じられるのはある意味幸せなことだが、運命の悪戯と呼ぶには過酷すぎやしないかと神に問いかけたくなる。想像を絶する想いがあったことだろう。視座が高ければ高いほど、悔しさに涙したことと思う。人間の生き様を勉強するには最適なドキュメンタリーだ。高校生くらいに読むことを勧めたい本だ。人の価値とは何かを考えさせてくれる。

いかに自分達が甘ったれな時代を生きているか、否が応でも自覚させられる。当時の彼らが持っていた気概と覚悟、人生を生きるとはこういうことだろう。人間力が違う。夢と希望を持って入学したであろう建国大学生。彼らの運命は数奇というには簡単すぎる。

かつて満洲国にあった、建国大学というその名が示す通り、満洲国を背負っていく人物を輩出するために作られた大学。当時のスーパーエリートが集められて、日本人は半分、他は中国人、韓国人、モンゴル人、ロシア人が同じ寮に住み、当時としては画期的な言論の自由が保障された大学だった。日本の敗戦でわずか数年で無くなるが、そこで出来た彼らの絆は一生ものだった。

逆説的だが、過酷な運命が待ち受けていたからこそ、絆は強くなったのかもしれない。人間万事塞翁が馬である。人は過酷な試練があるから成長できるのも事実だ。私だったら望んで試練を受けたくはないが、登場人物の一人は自ら他人の試練を代わってあげるという男の中の男が出てくる。人知れず、目立つ訳でも注目される訳でもなく、こうした人がかつては当たり前のようにいたんだと思う。

そうした人たちが日本の強さを支えていたように思う。本当に価値あることは見えないものだ。失って初めて気が付く。今、私たちも魂を失ってしまった社会で生きている。だからこそ、魂震わせて生きている人たちのストーリに感動するのだ。

煉獄さんが人気になったのも、心の中ではそうした生き方をしたいからだろう。心を燃やして生きたい人には、本書はおすすめなので是非一読してほしい。770円で心震えるのだから安いものだ。貴重な証言を残してくれた著者に感謝したい。素敵なお仕事をしてくださりありがとうございます。

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